じぶんちが遠くなっていく

程よく酔いがまわるのは、枝豆のポテンシャル、ないし甘くない檸檬酎ハイの氷の上に乗る、レモンピールの香りに感化されての事であります。

程よく酔いがまわった頃、私の眼前には二つの小鉢がありまして、どちらにも枝豆の様相を呈した片一方は実入り、もう片一方は亡骸が小さな山を作っていて、私は程よく酔いがまわっているので、亡骸の方をつまんではしがみ、ああ、また間違ったと心の中の私は何度も呟くのです。

この枝豆も、本来は注文外の品であり、店主の粋な計らいによる贈呈品であります。

ただ、こちらにもペースというものがありまして、注文したアテと檸檬酎ハイとのバランスを吟味した上で食べ進めている訳です。

するとどうなるか。

贈呈品であるアテと檸檬酎ハイの残量とのバランスが美しく崩壊します。

私はこういった時に気遣いを忘れない人間ですので、当然残量の少ない檸檬酎ハイを再度頼みます。

今私の前に、程よい残量の枝豆があります。

親方は殻を捨ててくださったので、間違える必要もありません。

よし、これを飲んだらヨメコの元へ帰ろう。

そんな心持ちで目の前の枝豆と檸檬酎ハイと向き合っている最中、親方の右手からまるでサティヤサイババの砂の如き所作で、枝豆が追加されたところです。

七尾旅人さんの湘南が遠くなっていくのメロディに合わせて

じぶんちが遠くなってく

ダメ押しのぼんじりにかぶりつきました

家まで数百メートル

私は私の妻にはなりたくないなと思います