自民、改憲へ地ならし 安倍首相が目指す「悲願」 

国会では改憲勢力が衆参両院で発議に必要な三分の二以上を占め、憲法審査会で各党の議論が続いている。安倍晋三首相が在任中の改憲に意欲を示す中、自民党は早期の改憲テーマの絞り込みと原案作成をうかがう。

■温度差

 首相は一日、改憲を目指す超党派議連の大会で「憲法改正自民党の歴史的な使命だ」と強調。側近の下村博文・党幹事長代行は「いつまでも『お勉強』でなく行動の時だ。具体的な発議(の項目)をつくらなければならない」と訴えた。

 自民党衆院憲法審査会で、各党の理解を得ることを優先し、本丸と位置づける九条改憲の主張を封印。参政権天皇制など大枠で九つの「議論すべきテーマ」を提示し、提案に沿う形で議論が進んでいる。

 議論に携わる自民党議員は「テーマの議論は年内に終わる。その後に改憲の必要性が高いテーマを絞り込み『深掘り』する」と説明。必要な改憲項目を具体化する作業を年内にも始め、来年にも「改憲原案」策定の検討に入るスケジュールを想定している。

 だが、各党の意見と思惑には温度差がある。

 自民党が多くの賛同を得られる「本命」とみるテーマは、災害などで選挙ができない場合、緊急事態と認定して国会議員の任期を延長できる条項の創設だ。公明党は議論の対象になり得るとの立場で、民進党も「検討に値する」と否定していないためだが、民進党は慎重な議論が必要とも主張。蓮舫代表は憲法記念日の談話で「改憲を目指す安倍政権の暴走を止める」と対決姿勢を鮮明にしている。

 自民党内には、改憲に前向きな日本維新の会と連携し、維新が主張する高等教育を含めた「教育無償化」の明文化を目指すべきだとの声もあるが「教育無償化は財源が課題で、憲法ではなく法律の問題だ」との異論も強い。

■警戒

 首相は政権復帰後、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法を成立させるなど、こだわりの政策を実現させてきた。残る最大の目標が改憲。党則改正で自民党総裁の三選が可能になり、来年の総裁選での三選が視野に入る中で、いつ改憲論議の加速にかじを切るかも焦点になる。

 今のところ、首相はテーマの選定や議論の進め方を自民党側に委ね、静観している。衆参で改憲勢力が三分の二を占めているとはいえ、国民投票過半数の賛成を得なければ改憲は実現しない。野党を含む幅広い意見を集約するのが改憲への近道と考え、そのためには自身が先頭に立たない方が得策との判断が働いているとみられる。

 しかし、首相に近い自民党議員は「首相の思いを党内は分かっている。今は慎重に『死んだふり』をしているが『判断』が必要な時も来る」と指摘。議論の停滞が続けば、首相が行動を起こす可能性を示唆した。

 熟議を求める公明党は、自民党改憲への動きを強めることを警戒。山口那津男代表は二日、東京都内で街頭演説し「どこをどう変えるかの議論は集約されていない。国民のコンセンサスは十分にできていない」とけん制した。

 (金杉貴雄、清水俊介)